【小型EV船事業/2026年10月レポート】
 EV船はもう始まっている

船は大きなエンジン音を響かせて走るもの。そんな常識が変わろうとしています。うみまち社の小型EV船事業の挑戦と、世界で広がるEV船の現在地をわかりやすく解説します。

EV船はもう始まっている

「EV」と聞くと、多くの人は電気自動車を思い浮かべるでしょう。日産サクラやテスラなど、電気で走る乗り物は身近な存在になりました。じつは、同じ変化が海の世界でも起きています。近年ではバッテリーに蓄えた電気だけで航行する「EV船」が実用化され、北欧では日常の交通手段としてEVフェリーやEV旅客船が運航されています。また、水中翼によって船体を海面から浮かせながら走る高速EV船も登場し、新たな海上交通として期待されています。EV船はもはや未来の技術ではなく、すでに世界各地で実際に使われ始めているのです。

世界初のEVタンカー「あさひ」
世界初のEVタンカー「あさひ」

なぜ今、EV船が注目されるのか

EV船に注目が高まる背景には、世界的な「脱炭素化」の流れがあります。地球温暖化対策として二酸化炭素(CO₂)の排出削減が求められる中、船舶も例外ではありません。IMO(国際海事機関)は2050年までにGHG (CO2を含む温室効果ガス)の排出量 ネットゼロ(実質ゼロ)※1を目指しており、船の電動化や代替燃料の活用が重要なテーマとなっています。EV船は航行中に排気ガスを出さないため、港湾や沿岸地域の環境改善にも貢献すると期待されています。

※1 参考(国交省資料):https://www.mlit.go.jp/report/press/kaiji07_hh_000396.html

IMO(国際海事機関)における2050ネットゼロに向けたGHG排出量削減イメージ

出典:一般財団法人 次世代環境船舶開発センター https://pdcgs.or.jp/zero

魅力は環境性能だけではありません。実際に乗船すると振動の少なさに驚きます。従来船で感じるエンジン音や振動が大幅に減り、船内は海風や波の音を楽しめるほど快適です。船員にとっては働きやすい職場環境につながり、乗客にとっても移動そのものの価値を高める可能性があります。

うみまち社の小型EV船の取り組み

旭タンカーでは、2022年世界初となるピュアバッテリー電気推進タンカー「あさひ」の竣工をはじめ、「あかり」「あすか」と現在3隻のEV船が運航しています。うみまち社ではこのEV船のノウハウを瀬戸内海の暮らしに役立てられないかと、2023年より小型EV船の実用化を検討しています。2026年2月には高松市が環境省の「第7回脱炭素先行地域」に選ばれ、その共同提案者の一員として小型EV船によるサステナブルツーリズムの実現に向けて、さらに検討を進めています。

EV船の普及には課題も多々あります。バッテリーの小型化や港の電力供給体制など、船の問題だけでなく、港湾や電力インフラを含めた社会全体の仕組みづくりが必要な技術だから。うみまち社では、自治体や地域の皆さんと試行錯誤しながら、日々この課題に取り組んでいます。前例のない取り組みゆえの苦労はありますが、海運は私たちの生活を支える重要なインフラ。その未来がどのように変わっていくのか、現場の状況とともに、EV船の仕組みや最新事例についてもお伝えできたらと思っています。

第7回「脱炭素先行地域」の選定証授与式の様子

【担当:守屋 航紀】

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